妊活

【不妊治療】「先進医療」ってなに?おすすめは?

2022年4月から不妊治療の保険適用が始まります。

厚生労働省は2022年3月4日、「先進医療」として6項目の技術を発表しました。

通常は保険対象の技術と、対象外の技術を組み合わせた治療は「混合診療」として保険の適用を認めていません。

つまり、「混合診療」の場合は本来3割負担である保険診療の部分も含めて全額自己負担となります。

「先進医療」と認められた技術に関しては、保険適用の技術は3割負担、先進医療の技術に関しては自己負担となり例外の扱いとなります。

今回先進医療と認められた技術は保険診療の対象とはなりませんでしたが、先進的な技術として安全性や有効性の検討が進められ先進医療として認められました。

今回は、どんな技術が先進医療として認められたかご紹介していきます。

また、現役の胚培養士の視点からおすすめの先進医療も紹介します。

僕は胚培養士なのである程度知識がありますが、おすすめに関してはあくまでも一個人の意見ですのでご注意ください。

先進医療に認められた6項目

先進医療に認められた技術は次の6項目です。

  • タイムラプス
  • SEET法
  • 子宮内膜スクラッチ
  • PICSI
  • ERA(子宮内膜受容能検査)
  • EMMA/ALICE(子宮内細菌叢検査)

ひとつずつ見ていきましょう。

タイムラプス

タイムラプスは受精卵を育てる培養器に内蔵されたカメラで、受精卵を一定間隔で自動撮影する方法です。

この技術を使わない場合は培養器から受精卵を取り出して観察を行います。

培養器の中は子宮内を再現した温度、ガスの濃度を保っています。

その培養器から外に出すということは受精卵にとってよくない環境にさらすことになってしまいます。

タイムラプスでは、培養器の外に出すのが最小限で済むため受精卵に優しいです。

また、一定間隔で自動撮影をしているのでそれをつなげるとパラパラ漫画を見ているかのような動画として観察することができます。

培養器の外に出して観察する方法では撮影できる枚数が限られてしまいますが、タイムラプスでは詳細な受精卵の評価が可能です

受精卵に優しくて詳細に観察できるすばらしい技術ですね!

SEET法

受精卵の培養に使った培養液を胚移植の数日前に子宮に注入する方法です。

培養に使った培養液の中には、受精卵から放出された物質が含まれていて、その物質が子宮に対して着床しやすい状態になるように作用するそうです。

つまり、この方法では胚の着床に適した子宮環境を作り出すと言われています。

胚移植をしたことがある方はよく分かると思いますが、移植と同じ手順です。

身体的負担はそこまで大きくないですね。

子宮内膜スクラッチ

胚移植を行う予定の前の周期に子宮内膜をこすって傷を与える技術です。

子宮内膜に物理的な刺激を与え、その修復過程で着床しやすい環境になることがあると言われています。

イメージとしては子宮がん検診で細胞をとるのと同じような感じで子宮内膜をこすります。

したことない方は痛いと感じるかもしれません。

僕の妻が子宮がん検診よりも先に子宮内膜スクラッチを経験したのですが、想像したよりも痛くてもうやりたくないと言っていました。

痛みの感じ方は人それぞれですのでご参考までに。

PICSI

顕微授精の際にヒアルロン酸というものを用いて成熟した良い精子を選択する技術です。

顕微授精をする際の精子の選択方法は、通常は大きさや形、動き方などで決めています。

見た目だけですとクリニックによって、また培養士によって判断が違ってきますので、顕微授精後の受精率や妊娠率などに影響してきます。

そこでヒアルロン酸を用いて精子を選別することで「生理学的に」と言いますが、客観的に良い精子を選ぶことができます。

ERA(子宮内膜受容能検査)

子宮内膜の細胞を採取して遺伝子の発現を解析し、内膜組織が着床に適した状態であるかどうかを評価する技術です。

胚移植をする際の移植のタイミングを調整するのに用いられます(正確には投薬のタイミング)。

子宮には移植周期の中でも「着床の窓」と言って着床に適したタイミングがあります。

このタイミングが移植のタイミングとずれているとどんなに良い胚でも受精する確率が低くなってしまうそうです。

12時間ずれているだけでも成績が下がるそうですよ!

何度移植しても妊娠しない方は、このずれがある可能性があります。

ERA検査をして着床の窓と移植のタイミングを合わせます。

実際に僕の働いているクリニックでもERA検査でタイミングを調整したら一発で妊娠したという方を見てきました。

クリニックによって料金は違いますが、15万円前後です。

EMMA/ALICE(子宮内細菌叢検査)

慢性子宮内膜炎が疑われる方に検査します。

子宮に炎症があると着床するのに良くない環境です。

子宮内の細菌が正常かどうか、菌の種類はどうかを判断します。

子宮内膜炎の診断となった場合は、抗生物質での治療や乳酸菌の割合を上げる治療などを行います。

ERA検査と同時にできるので、ついでに検査しておくパターンが多いです。

ERA検査をせずに単独でされることはあまりないかと思います。

結局おすすめは?

6つ簡単に説明させてもらいました。

注意が必要なのは料金です。

ある程度相場はありますがクリニックによって値段が違います。

また、自己負担になるので色々やろうとすると高額になってしまいます。

価格の面も自分達がやるかどうかの判断材料になります。

最後に培養士としての立場からおすすめの先進医療について紹介します。

みなさんにおすすめ

体外受精初めての方はもちろんのことすべてのカップルにおすすめしたいのは、

  • タイムラプス
  • PICSI

この2つです。

タイムラプスは説明にも書きましたが、受精卵に優しくて詳細に観察できる素晴らしいシステムです

論文によってはタイムラプスの使用によって妊娠率が高まるといったものもあります。

胚へのストレスが減るのも良い点ですし、詳細な観察で妊娠の可能性が高い胚を選別しやすいのも良い点です。

個人的には、保険適用になってもよかったのになぁと思っています。

料金はおおよそ2万円〜3万円くらいかと思います。

PICSIは顕微授精をするカップルにおすすめです。

精子の選別を見た目だけで行うと、どうしても培養士の腕の差が出てしまいます。

すご腕培養士ばかりなら良いのですが、やはり個人差はあります。

客観的に選んだ方が安定した結果が得られると思います。

データとしては流産率が低くなるという論文があります。

現在は顕微授精の値段に含まれている場合が多いですが、先進医療となった場合はこちらも2万円〜3万円くらいになるのではないでしょうか。

なかなか着床しない方におすすめ

移植を複数回しても妊娠しない方におすすめなのは、

  • ERA、EMMA/ALICE

がおすすめです。

着床のずれを判断するERA検査だけでも良いかもしれませんが、EMMA/ALICEはERA検査と同時にできるのでついでにやっておいて損はないかと思いますがお財布と相談です。

着床の窓のずれは僕のクリニックでも実際に見てきたので、胚移植が複数回不成功の場合は検討しましょう。

目安としては胚移植3〜4回連続して妊娠しなかった時に検査を検討しましょう。

ERAだけだと15万円前後、EMMA/ALICEも一緒にすると20万円をこえるケースもあります。

個人的には明らかな子宮の炎症所見がなければERAだけで良いと思います。

お財布のこともありますので、担当医師と相談して検査を行いましょう。

あまりおすすめしないかも

賛否両論ありますが、あまりおすすめしないものもあります。

  • SEET法
  • 子宮内膜スクラッチ

SEET法は子宮が着床しやすい状態になるように培養に使った培養液を注入する方法です。

でもSEET法で本当に着床しやすくなっているかは評価できません。

それなら、ERA検査で着床のタイミングが合っているかどうか調べたほうが良いと思いませんか?

また、着床のしやすさを上げる方法としては保険診療でできる「高濃度ヒアルロン酸含有培養液を用いた前処置」という技術があります。

さらに、着床が成立するには子宮の環境だけでなく胚の状態も重要です。

着床するには胚が孵化する必要がありますが、こちらも保険診療でできる「アシステッドハッチング」という技術があります。

SEET法の値段は2万円前後〜5万円前後とクリニックによって大きく違います。

この価格の割に効果が伴うのかどうか…と言ったところです。

子宮内膜スクラッチでは子宮内膜に傷をつけ、その修復過程で着床しやすい環境を作り出す方法です。

この成果が論文に出されたのは今から約20年前です。

アメリカやヨーロッパのガイドラインには記載されていません。

SEET法のところにも記載したように、20年前と比べて今では保険診療と認められたより優れた技術があります。

あと、単純に痛いのでおすすめしません。

経験者の妻いわく、やらない方がいいよとのことです笑

値段は1万円〜2万円のクリニックが多いです。

最後に注意事項

注意していただきたいのはすべてのクリニックで全部の先進医療が行えるわけではないということです。

全国的にも有名な大きいクリニックなら全部できると思います。

でも、この技術はできるけど、この技術はやっていないというところが多いと思います。

治療内容についてはホームページに記載があるクリニックが多いですので確認してみてください。

また、先進医療の価格はクリニックによって違います。

同じ先進医療でも1万円のところもあれば、3万円のところもあります。

極端なケースでは、「うちではこの先進医療はサービスでお金は取りません。」というクリニックもあると思います。

お財布事情もありますので、料金と必要性との兼ね合いを良く考えて検討しましょう。

この記事では、僕のおすすめする先進医療についても記載しています。

僕は胚培養士なのである程度知識はありますが、あくまでも一個人の考えです。

別の方が同じ記事を書いたら意見が違うかもしれません。

クリニックではそれぞれ特色がありますので僕がおすすめしなかった先進医療をおすすめされる場合もあるかもしれません。

また、ぶっちゃけて言うとクリニックも慈善事業ではないので利益のために色々とオプションをおすすめすることもあります。

事前によく調べたり、夫婦でよく話し合ったりして自分たちの意見を持って治療に臨みたいですね。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

みなさんの妊活がうまくいきますように!





【不妊治療】国の助成金を受けてきた人も保険適用されるこれまで国や都道府県の助成金を受けてきた方は、保険適用を受けられるか心配されていると思います。助成金を使い切っていても保険適用されますので安心して治療に臨んでください。...
ABOUT ME
げんじろう
こんにちは!げんじろうです! 病院で検査技師として働いています。 循環器などが専門です。 自身の不妊治療の経験から胚培養士に転職! 妊活患者さんやコメディカルスタッフ、学生さんに役立つ情報を発信していきます。