この研究では、肺高血圧症(PH)患者の運動負荷心エコー検査で男性と女性の間の運動中の血行動態の違いを調査しています。
Sex difference in pulmonary hypertension in the evaluation by exercise echocardiography
https://doi.org/10.1177/2045894020988453 Pulm. Circ. January 2021 Volume: 11 issue: 1
男性の方が生存率が低い
右心カテーテルで肺高血圧症とされた患者に運動負荷心エコーを実施し、生存率を分析した。
運動負荷心エコーは低負荷、中負荷、高負荷の運動でTRPGや肺血管抵抗を記録した。
93人の患者で、男女間に肺動脈圧と肺血管抵抗に差はなかったが、男性は生存率が低かった。
低負荷でのTRPGは男性で有意に低かったが、最大負荷では男女差なし。
低負荷運動でのTRPGの変化が少ない男性患者は、生存率が低いことを示した。
右心機能は男性の方が劣る
肺高血圧症は肺動脈のリモデリングによる肺血管抵抗の増加によって引き起こされます。
そして最終的には右心室の機能障害を引き起こします。
一般的に、PHの発症率は女性で高く、男性では予後不良です。
いくつかの研究によると、男性患者は肺血行動態が悪化していることが示されています。
また別の研究では性ホルモンなどによる影響が裏付けられています。
例えば、エストロゲンは血管リモデリングに関与するなど肺循環に様々な影響を及ぼします。
低負荷でTRPGが少ししか増加しないと予後不良
肺動脈性肺高血圧症(PAH)の初期段階では、運動中のTRPGの増加はPH発症の予測因子となる可能性があります。
一方でPHの進行した患者では、TRPGが少ししか上昇しないことがあります。
これは、右室機能・予備力の低下を反映している可能性があります。
右室機能の低下のため、男性患者で低負荷運動でのTRPGの変化が少ない患者は、生存率が低いことを示しています。
PH患者の右室機能と予後の関係はさらなる評価が必要
本研究では右室機能のパラメータとして使用されたのはTRPGだけです。
右室機能とPH患者の予後との関係を明らかにするには、詳細な評価が必要です。
ただ、低負荷でのTRPGの変化量が少ないことは男性PH患者の予後マーカーとなる可能性は示唆されました。
性差があるということを念頭に置いて、運動負荷心エコーを実施したいですね。